「 祐樹。
最初に病院で目を覚まして、祐樹が(家に)火をつけたと聞いた時から、
おばあちゃんはお前のことを許していたよ。
もしかしたら、火の中にいたときも許していたのかもしれない。
祐樹はおばあちゃんの好きな花がカスミソウだって知っていたよね。
顔を出さなくてもナースセンターに届けられた花束で、
毎日のように祐樹が来てくれているのはわかっていた。
花束が届く度に、早くケガを治して退院しなくちゃっておもってたよ。
わたしは祐樹の気持ちがわかっていたし、世間さまが何と言っても、
おまえが本当はどんな子なのか知っている。
さぁ、こっちへおいで。
わたしには、いつか今日みたいな日がくるのはわかっていた。
このひと月半、辛いことなんてひとつもなかった。
おまえが苦しんでいたことに比べたら、身体の痛みなんて何でもなかった…。」
IWGP Ⅶ [バーン・ダウン・ザ・ハウス] より
こういう、人の気持ちを描くのが上手だから、石田衣良さんの本が好きです。
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